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悪性発作性頭位眩暈症

- 脳外科の眩暈(めまい)の病気

 発作性頭位眩暈症(ホッサセイズイメマイショウ)については、別ページで説明しました。ある特定の姿勢を取ると、突然、回転性の眩暈(メマイ)が起こる疾患です。原因は、長らく内耳にあると考えられていきました。

 ところが、中枢性すなわち脳に原因がある場合にも、同じような発作が起こることがわかりました。ただし、その原因は第四脳室ないしはその周辺の障害によるものと考えられ、また発生のしくみについては髄液交通(ズイエキコウツウ)の障害と推測されているに過ぎませんでした。
 しかし、ある医師は、1971年、この中枢性の発作性頭位眩暈症がまさに「生命の危険を知らせる症状」であることを強調し、内耳障害のものと対比する意味で、「悪性発作性頭位眩暈症(アクセイホッサセイズイメマイショウ)」と呼ぶべきことを提唱しました。ただし、中枢性であっても生命に別状のないものもあります。これは、「仮性良性発作性頭位眩暈症」との名前で区別しています。悪性発作性頭位眩暈症の眩暈には、次のような特徴があります。

@ある頭位をとると、眩暈、吐き気、頭が重たい感じ、頭痛が起こる。

A眩暈の治まっている間は、他の症状もほとんどなく、一般的な神経学的検査でも以上は見当たらない。

B患者さんは、頭を一方に傾けて顎(アゴ)を引いた独特の姿勢をとる。

C内耳疾患の場合とは逆に、病巣のある方を下にした頭位をとる。反対にすると、眩暈が生じる。

 内耳障害による「良性」のものと、脳の障害による「悪性」のものとでは、回転性の眩暈が起こるという点では、よく似ています。ただし、大きな違いもあります。その一つが減衰現象です。この症状を観察することが、診断の大きなポイントになります。
 「良性」の場合は、眩暈の起こる姿勢を何度かといっているうちに眩暈が起こらなくなることは別ページでお話ししました。これが眩暈の減衰現象です。「悪性」の場合は減退現象が少なく、検査のために繰り返し眩暈の姿勢をとってもらうと、そのたびに眩暈が現れます。

 また、脳の腫瘍(シュヨウ)によって眩暈が生じている場合には、同時に頭痛や吐き気、嘔吐(オウト)を伴なうため、患者さんは眩暈の出ない姿勢を執拗にとりたがります。これがブルンスの頭位で、まるで頭から首にかけてギプスで固定しているように同じ姿勢を続けます。1902年にドイツのブルンスが初めてこの症例を報告し、著者がその名をつけました。
 「悪性」の眼振は、「良性」や「仮性良性」とは全く異なります。頭を右下にしたときと左下にしたときでは眼振の方向が変わり、つねに上にある耳の方に目が向かいます。これを「方向交代性上向性頭位眼振」あるいは「垂直性の頭位変換眼振」といい、一風も二風も変わった眼振です。しかも、何度検査をしても、その都度症状が繰り返されます。
 病巣は小脳虫部、とくに下虫にあり、原因は脳の腫瘍や出血です。まさに生命に危険を招きかねないところが、仮性良性とは大きく異なる点です。小脳虫部を中心とする部分に出血が起こった場合は、慢性期に頭をベッドの下に垂らしたり、枕が低かったりすると激しい回転性の眩暈が誘発されます。その場合、首をひねっても眩暈が起こることはありません。さらに、手足の運動や眼の動きなど、小脳症状にも異常が現れません。また、前庭小脳に傷がつくと、平衡感覚や眼の運動などが阻害され、内耳障害の場合とよく似た回転性のめまいが現れます。

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